カスタム電源とは
カスタム電源とは、既存の電源ではカバーできないお客様の特殊な要望や課題解消のため、個別に設計・製造するカスタマイズされた電源を指します。
「カスタム電源」は特注品
「電源」というと、その多くは、仕様が決定された既製品です。
様々な電気製品にの中には、元となる(入力される)電気(AC100Vや電池など)から、製品内部の様々な回路や部品に適した電気に変換する装置が内蔵されています。
この電源変換装置を「電源部」と言います。
業界では、この「電源部」を単体のユニットとして製造されたものを「電源」と呼びます。
電源は、
- ACアダプターのように外部に取り付けられる
- 電気製品の内部に部品として組み込まれる
といった形で使用され、変換された適正な電気を供給する重要な役割を果たします。
また、電源にはカタログに載っている標準的なモデルがたくさんあります。
電気製品製造メーカーが部品として電源を採用する際、多くは標準的なカタログ品から選定することになりますが、中には「どうしてもカタログ品では合わない」というケースが生じることもあります。
こうしたケースで登場するのが「カスタム電源」です。
カスタム電源は通常、カタログ品にアレンジを加えれば済むようなケースがほとんどです。
この場合、1から設計しなおすのではなく、既存の電源を製品仕様に対応できるようにカスタマイズするという方法で対応します。
このような既存品を製品に合わせてカスタマイズする方法を「セミカスタム」と言います。
一方、時には全て1から設計し直す方が、ベターかつ安上がりというケースもあります。
こうしたケースでは、使うお客様の組み込む製品に合わせて特注で作ります。
1から設計し直す手法は、セミカスタムに対し「フルカスタム」と呼ばれます。
フルカスタムの場合、製品に合わせて回路を最適化するため、より効率的かつ小型、高機能な電源が実現します。
電源 | カスタム電源 | |
---|---|---|
仕様 | 決まっている | 決まっていない (製品ごとに最適化) |
他の製品への交換 | 代替可能 | 不可能 |
価格 | 安価 | 高価 |
付加価値 | 無し | 有り |
カスタム電源は、既製品ではカバーしきれない領域に対応できる電源と言えるでしょう。
最適な電源が見つからない場合、既存の電源を製品に合わせてアレンジしたり(セミカスタム)、1から設計する(フルカスタム)など、対応は様々です。
分野解説
電源も電子部品として区分されるので、製品分野として見た場合「電子回路の設計~製造」というプロセスを経て製品化されます。
電子回路の設計は、仕様に沿って製品を動作させるため、または必要な機能や信頼性を実現するための欠かせないプロセスです。
電源(電源回路)は殆どの電気製品で使われ、方式や機能も熟成されたものですが、電気製品の複雑化や高機能化によって、新たな最新の技術が必要とされるケースもある、特殊な専門分野でもあります。
近年のカスタム電源をとりまく環境の変遷
電気製品が世の中に登場してしばらくの間、電気製品製造メーカーは自分達で設計した独自仕様のもので十分対応できていました。 なぜなら、電源に対する高機能の要求が無かったためです。
その後、電源に対する機能要求の高まりや効率化の観点から専門の電源メーカーが登場しました。
当時は電気製品メーカーは「製品に合わせた独自仕様の電源」を外部の電源メーカーに依頼するという形が一般的でした。
つまり、現在とは逆に「カスタム電源」が広く流通していたのです。
これは、世の中にはカスタム以外のカタログ品の需要が無く「餅は餅屋」のように、電源屋に依頼するほうが効率的であったことが理由です。
しかし近年では、たくさんの電源メーカーがあり、多種多様なカタログ品の電源が揃っており、そこから製品を選び、採用することで十分であるケースがほとんどです。
汎用的に用いることのできる標準仕様の電源が生まれたことで、製造メーカーは必要な要求を満たす電源を、ローコストで手に入れることができるようになりました。
しかし、カスタム電源は未だに必要とされています。
既製品としての電源が流通している現在でさえ、カスタム電源に需要があるのは何故なのでしょうか。
カスタム電源は何故必要か?
カスタム電源が必要とされる理由は、端的に表現すると「既製品ではカバーできない要求に応えられるから」です。
「大量生産に応える」といった要求のもと、仕様が標準化され、汎用的に用いることのできる既製品としての電源が誕生しました。
そのため現在は仕様が標準化され、汎用的に用いることのできる既製品としての電源が広く用いられています。
しかし、全ての要求に既製品で対応できるなら、そもそもカスタム電源は存在しません。
通常、製造メーカーは、既存の電源を製品に組み込むことを考えます。
そして、要求に応える仕様の電源を探すのですが、
- 適切な電源が見つからない。
- 各部に必要な電源を供給するために、複数の電源が必要になり、結果的にコストがかかってしまう。
- 特殊な機能を持った電源が必要。
このような場合に、カスタム電源の出番になります。
では、具体的にカスタム電源が、どのように用いられているのでしょうか?
これについては、当事業部に依頼があった、実際の事例をご紹介します。
【事例】品質に問題がある海外製電源からの置き換え
品質や安全性に懸念が残る、安価な海外製の電源を使用されていたお客様からの開発依頼がありました。
お客様の課題
それまで用いていた海外製の電源には品質的に問題があり、その対応にコストがかかっていたそうです。
「安価」であるため導入していた製品に、問題解決のための余分なコストが加わったことによって、結果的にコスト増が起こっているという点が課題でした。
ご要望
同スペック品をの問題を解決した上で同値で提供して欲しい。
対応
そのままでは実現不可能でしたが、製品の周辺回路を確認させていただくと、当事業部ノウハウの適用が複数可能であることがわかりました。
周辺回路の改善から着手したことにより、回路のスリム化が実現。トータルで当初の要求価格以上のコストダウンが叶いました。
この件では、カスタムならではの強みを活かしています。
カスタム電源では、回路設計から携わることも可能です。そのため「周辺回路から見直し最適な技術を提供する」という方向での提案もできます。
カスタム電源を用いる際、念頭に置くべきは「如何にコストをかけず、お客様の要求を実現するか」というところにあると、当事業部は考えております。
カスタム電源がソリューションとして機能する課題の一例
- 電源回路の最適化し、製品を小型化したい
- 精度や安全面、品質等、信頼できる電源が欲しい
- 特殊環境で安定動作させたい
- 電磁波等のノイズに制約がある条件に対応した電源が欲しい
カスタム電源を用いることで、既製品では対応できない課題を解消できます。
汎用品では実現できない課題がある場合、カスタム電源の導入によって解消できる可能性があります。
トータルでコスト削減になるケースも
カスタム電源は一見高額なように見えますが、逆にコストダウンも可能になるケースがあります。
当事業部がお勧めしている「周辺や基本回路までの合理化」も行なうことで、最終製品が10%以上のコストダウンに至るケースも珍しくはありません。
また、1からの設計ではなく、既存電源のアレンジで対応できる「セミカスタム」のケースも多々あります。
当事業部には、電源以外の様々な回路設計の経験があります。
回路技術のアイデアを多数ライブラリ化しており、他社にできない「提案型のカスタム化」によって実現したカスタム電源を提供。
当事業部のカスタム電源は、数多くの製品に採用されています。
当事業部では、セミカスタム、フルカスタム問わず、お客様にとってベストな電源を提供できるよう「提案型のカスタマイズ」を行っています。
これは、回路設計のプロだからこそなせる技です。
電源(電源回路)の最適化は、これまで積み上げてきた「長年の実績」と、多くのテストや失敗から学んだ経験によって生まれた「高度な技術」、そして柔軟かつ斬新な「アイデア」を組み合わせて実現されます。
さらに当事業部には、電源回路にとどまらない、様々な分野の知識があります。
知識・経験・アイデアを駆使することで、唯一無二の電源回路をご提供いたします。
また、コストのみならず、製品の長期供給も踏まえた対応も可能です。
電源をカスタムすることで、部品の統廃合にも対応できる回路方式を取り入れつつ、時代に合った設計手法で課題をクリアするノウハウを適用できます。
- 製品への最適化による合理的な電源回路の提供
- 既存技術の適応、既存電源のカスタマイズでコストを最小限に抑制
- 長期供給も踏まえた柔軟な対応
既存の電源では対応できない問題解決が必要な際は、是非当事業部へご相談ください。